Story
謎めいた大富豪 モンテ・クリスト伯――
破滅に追いやった者たちへの 美しき制裁
将来を約束された若き航海士ダンテスは、ある策略によって、無実の罪で投獄され、次第に生きる気力を失っていく。絶望の中、脱獄を企てる老司祭との出会いにより、やがて希望を取り戻していった。司祭から学問と教養を授かり、さらにテンプル騎士団の隠し財宝の存在を打ち明けられる。囚われの身となって14年後・・・奇跡的に脱獄を果たしたダンテスは、莫大な財宝を手に入れ、謎に包まれた大富豪“モンテ・クリスト伯”としてパリ社交界に姿を現す。そして、自らの人生を奪った三人の男たちに巧妙に近づいていく──。





少女時代に胸を躍らせ読んだ『巌窟王』の世界が、生き生きとした映像で味わえる幸福に、没頭してしまった。時代に感謝するほかない。
絶望のどん底からの復讐劇。 かつて演じたエドモン・ダンテスが心によみがえり、人生のすさまじい荒波を共に渡った。それは「正義」を果たす道のり、あるいは、身体の奥深くに埋もれた「愛情」を掘り起こす道のりだったのかもしれない。
面白かった。よく知っている話なのにかなり引き込まれた。友人の裏切りに孤島の監獄からの脱獄の冒険感。めくるめく因果。陰謀。やはり復讐ドラマの金字塔なのだと改めて痛感する。王道の映画化の成功例だと思う。
エドモン・ダンテスからモンテ・クリスト伯へ。カバルカンティへ、エデへ、アルベールへ。繋がれる憎しみと愛は再びエドモンへと帰る。なんと美しい映画でしょうか!待って、希望した甲斐が有りました!
私自身が、かつてエドモン・ダンテスを演じた際に感じた苦悩や復讐に燃える野心、そして愛の切なさが非常に鮮明に、この作品に描かれていました。ご覧いただく方々に、きっとたくさんの感動をお届けすることでしょう。
海に行きたくなった。 海はいいなあ。 頑としてそこにあって動かず、しかし常に揺蕩い、波立ち、大きくうねっている。 金色の光を撒き散らして心を温め、心地良い風を送ってくる。 かと思えば月の引力や遠い低気圧由来の物凄い力を、その暴力的な本性を見せ付けたりもする。 生命に満ち溢れた巨大な死なのだ。 エドモンは海だ。 陸に住む男たちのあまりに人間的な、卑小な営み企みとのコントラスト。 行われた過ちを、神の代行者の如く正しさへ戻してゆく。 そういう物語だと思ってきたが、そうではないのかもしれない。 凡庸な悪である我々の力など、海が持つ想像を絶する物理的な力の前に、寄せては返す引き潮のような生命の根源の回復の力に敵うはずがないではないか! 広大な水平線を指して、帆にたっぷりの追い風を孕み進み行く船影を見送る時、私は爽快な、幸せな気持ちになった。 海はいいなあ。海に行きたい。
※敬称略